2022.04.27

対談#3:VRで顧客ニーズの更に1歩先を見せる
-LAB.AS 学多 x (株)エージェンテック 菊地

インタビューのお相手は株式会社エージェンテックの菊地さん。エージェンテックが提供する「Smart360」と「ABook」に触れながらバーチャルとリアルの融合、VRのプラットフォームとしての役割について語りました。

リアルとバーチャルの融合

学多晃司 LAB.ASは今年3月、大阪で開かれた「大阪・関西万博 開催支援EXPO」にグループ会社などと共同で出展しました。2025年の大阪・関西万博に参加する外国政府や企業向けに技術やサービスを紹介する展示会で、イベント終了後にオンラインでの展示会も開催されました。最近はこういった、リアルとオンラインがセットとなった展示会が主流になりましたが、オンラインでは単なるホームページとなっていることが多い。そこで、われわれは360度パノラマでリアル展示会のブースの様子をバーチャルで再現したところ、「分かりやすい」と評判でした。そのペースとなったのが、エージェンテックさんの「Smart360」を使ったオンライン展示パッケージでした。


「Smart360」は、360度パノラマのVR(バーチャル・リアリティ)コンテンツを簡単に制作し、WEBサイトやSNSですぐに公開できるクラウドサービス。空間上に文字、写真、音声、動画などの情報を埋め込むことができる。LAB.ASはリアル展示会のブース内を360度カメラで撮影し、臨場感あふれるバーチャルブースを作成した。
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菊地智子さん 最近はリアルな展示会を開けるようになりましたが、バーチャルでしかできなかったころと違い、リアルとバーチャルの融合でどれだけ目新しく見せることができるかが求められるようになっています。リアルはリアルで、アーカイブ配信はウェブでという単純なものではなく、そんなパッケージだと差別化できますね。

学多エージェンテックさんは仮想体験的なものが得意な会社ですが、最近はメタバースが注目されています。追い風が吹いているのではないですか?

菊地さん うちの製品はどちらかというとBtoB向けに作られています。C向けだとスピード感が早く、メタバースやVR以外にもAR(拡張現実)やMR(複合現実)といった様々なものが展開されていますが、企業がメタバースをビジネスシーンで活用するのは数年先になるのではないでしょうか。見せ方ももちろん大事ですが、ビジネスでどう使うかを考えると、分かりやすさや理解してもらいやすさの方が需要だと思います。

学多 確かにメタバースという言葉だけ先走っているように感じますね。

菊地さん メタバースにもメリットはありますが、ビジネスシーンでは人間が使いこなさないといけない。スマホですら思い通りに使えない人がいるのに、そんな高度なものを渡されてもどうでしょう。2016年にリリースした「Smart360」も最初は住宅のモデルルーム以外の用途はほぼありませんでした。その後、製造業のホームページでバーチャルショールームとして使われるようになり、ようやく3年ほど前から鉄道会社さんや製鉄会社さんでマニュアルなどの社内向け用途でVRが活用されるようになりました。実はVRをオフラインでセキュアな環境で配信できるツールはあまりありません。その点、当社は「ABook」というエンジンがあるのが大きな強みです。

「ABook」は、タブレットやスマートフォンなどを使って写真や動画を含む社内資料を安全に社外に持ち出すことができるコンテンツ管理アプリ。コンテンツごとに公開範囲や閲覧期間を設定でき、オフラインでも利用できる。「ABook Biz」をベースに業務報告を自動的に帳票化したり、デジタルサイネージを簡単に配信できたりする機能を持ったさまざまな製品があり、すでに40万端末に導入されているという。

学多 社内文章をPDFで配信すれば印刷しなくてもいいけど、機密がだだ洩れになる恐れがある。そのセキュリティを確実にしているのが「ABook」ですね。

菊地さん 他社のペーパーレスのシステムとの違いをよく聞かれるのですが、機能としては「アップロードして、配信して、以上」なのです。ただ、セキュリティなど最低限必要なところはクリアしたうえで、「かゆいところに手が届く機能がたくさん入っています」ともお伝えしています。例えば会議をするときに端末同士を連動させ、一人が端末でページをめくったら他の人のページもめくられるといった機能などをつけています。ログは標準機能でついますが、それがオンラインだけでなくオフラインでも使えます。営業担当者が出先でどんなことを話し、どんな資料を見せたかという情報が欲しいという企業さんが増えましたが、海外ではまだオフラインでしか使えない場所がありますから。お客様の用途に合わせて提案できる、こうした武器がたくさんあるのです。iOS、Android、Windows、WEBの全部に対応しているのも強みですね。

学多 会議で資料を印刷して配ったりするのはもうやめましょう。それ、iPadで全部できますよ、と。心配なのはセキュリティですが、それも保証されている。しかも、その資料をいつ誰に見せたかというログもオフラインでもちゃんと取れる、というわけですね。他社が同じようなことをしようとすると、開発費がすごくかかりそうです。

菊地さん ログを取れるというのは今では当たり前になりました。最近は「コンテンツをリッチにしたい」というお客様が増えていますが、HTMLで作ったコンテンツもオフラインで流すこともできます。例えば、医療機器メーカーの担当者が人工関節の営業で病院に行ったとします。お医者さんに会ってすぐiPadの画面で人工関節の3D画像をぐるぐる動かして見せることができる。これが、オンラインにつないでWEBを立ち上げてと…ともたもたしていると、お医者さんはどこかに行ってしまう。

学多 既存のVRを超える概念として、エージェンテックは360度パノラマ空間にコンテンツを組み合わせて訴求力をアップさせる「VR2.0」を提唱されています。

菊地さん 当社はこれまで新しい技術が出ると、それを積極的に取り入れて新しい製品を作ってきました。タブレットが登場した2010年に「ABook」をリリースし、360度カメラが出てきたタイミングで「Smart360」を投入しています。今は現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)が始まっているので、それにあわせて電子帳票を。遠隔のコミュニケーション支援ツールも昨年リリースしました。「VR2.0」もそうした取り組みの一つです。10ページの資料を読むのと3分の動画を見るのとどちらが早いか。同じようにVRの方が絶対に便利です。受け入れられる時代が来る確信はありますね。

学多 確かに今回の展示会も、360度パノラマを見てもらったら一発で分かる。

菊地さん こういうソフトウェアって結局プラットフォームなのです。そこに何を載せるかは企業さんの自由で、エクセルやワードでつくったものを配信するのか、それを動画にして分かりやすいリッチなコンテンツとして配信するのかは会社によってよりけりです。ただ、そこにどれくらいのマンパワーをかけることができるか。われわれはお客様のIT化がどこまで進んでいるのかを見て、ステップを組んであげることができます。最先端の営業をしている会社のコンテンツを見ていますし、まだ紙のカタログを使っている会社も見ているので、お客様がどのステージにあるのかを判断しながらサポートさせていただく。ただ、夢をお見せすることはできる。「こんなことやっている会社もあるのですよ」と。これはお客様にとって意味のあることだと思います。うちは50人くらいの規模の会社なので、お客様の生の声を反映しやすいというのも強みです。

学多 でも、今は「いいものを作れば売れる」という時代ではありませんね。

菊地さん 多様な提案をしないと、お客様に刺さらない時代になりましたね。一方で、お客様はサービスが多くなりすぎで何を選んでいいのか分からない。「ここにお願いしたら一気通貫で全部やってもらえる」というのがいいのですが、当社は制作部隊が小人数なので個別対応くらいしかできない。LAB.ASさんは「Smart360」を使ったオンライン展示パッケージを販売されていますが、うちがやりたくてもできなかったものです。御社のようなパートナー企業と新しいビジネスモデルを作っていきたいですね。

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